Ripperの出力とかParseletの解析結果などを扱うのに、ArrayやHashでパターンマッチして中身を取り出す処理を多用する必要があったのでパターンマッチライブラリを作りました。
GitHub: todesking/patm
同様のライブラリとしてはpattern-matchがあります。
機能面ではpattern-matchのほうが豊富ですが、PATMは高速なのが売りです(DSLによるメソッド定義を使用した場合、ネイティブRubyコードにコンパイルされるため50倍くらい速い。case式内で使用した場合でも7倍程度)。ベンチマークについてはこの記事の下のほう参照。
主な機能
DSLによるメソッド定義
extend Patm::DSL
することで define_matcher
を使ったメソッド定義が可能です。
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| require 'patm'
class Matcher
extend Patm::DSL
P = Patm
_ = P._any
_1, _2, _3 = P._1, P._2, P._3
_xs = P._xs
define_matcher :match do|r|
# ルールオブジェクトrが引数に渡ってくるので、 on および else を使ってパターンを定義する。
# - on(pattern) {|match, _self| }
# patternにマッチした場合ブロックが呼ばれる。
# match: マッチオブジェクト。キャプチャした値にアクセスできる。
# _self: 他のメソッドを呼ぶ場合、この引数を経由して呼ぶ
# - else {|value, _self| }
# onで指定されたどのパターンにもマッチしなかった場合にブロックが呼ばれる。
# (elseを指定しない場合はMatchError例外となる)
# value: マッチしなかった値
# _self: 上述
r.on(value: {key: _1, value: _2}) {|m| "KV: #{m._1}, #{m._2}" }
r.on([:assign, [:v, _1, [_2, _3]]]) {|m| "AS: #{m._1}, #{m._2}, #{m._3}" }
r.on([:container, _1]) {|m, _self| _self.match(m._1) }
r.else {|obj| "Unknown: #{obj.inspect}" }
end
end
m = Matcher.new
m.match(1)
#=> Unknown: 1
m.match({value: {key: 10, value: 999}})
#=> "KV: 10, 999"
m.match([:assign, [:v, 10, [20, 30]]])
#=> "AS: 10, 20, 30"
m.match([:container, [:assign, [:v, 10, [20, 30]]]])
#=> "AS: 10, 20, 30"
|
case式内での使用
Patm.match(pattern)
を使用することで、case式内でパターンマッチできます。
手軽だけど、毎回パターンオブジェクトを構築する必要があるのでDSLを使用するよりは重い。
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| case value
when m = Patm.match([1, 2, Patm._1])
m._1
# ...
end
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パターン: 値によるマッチ
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, "foo"
, :symbol
, /regex.*/
, 等。
case式と同様、===
による比較を行います。
パターン: 任意の値
Patm._any
で任意の値にマッチします。
パターン: キャプチャ
Patm._1, Patm._2, ...
は、任意の値にマッチし、その結果を対応する数字でキャプチャします。
キャプチャした結果は、マッチオブジェクトからm._1, m._2, ...
を使用してアクセス可能です。
また、パターンの後ろに[]
をつけることにより、任意の名前でキャプチャ可能です。Patm._any[:x]
は、マッチオブジェクトからm[:x]
として参照可能です。
パターン: 配列
配列内の要素を元にマッチします。
配列には特殊なパターン Patm._xs
を一個だけ含めることができます。
パターン[1, 2, Patm._xs[:xs], 3, 4]
は、[1, 2]
で始まり[3, 4]
で終わる任意の配列にマッチし、中間の配列が:xs
という名前でキャプチャされます。
パターン: ハッシュ
ハッシュ内の要素を元にマッチします。今のところキーは定数のみで、パターンは使えません(需要が思いつかなかったので)。
特殊なオブジェクト Patm.exact
をキーに含めることで、パターンに含まれないキーを許容するかどうか指定できます。初期設定では、パターンに含まれないキーも許容します。
また、Patm.opt(...)
やパターンの.opt
メソッドを使用することで、キーが必須かどうかを指定できます。
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| # 1
{a: Patm._1, b: Patm._2.opt, Patm.exact => true}
# 2
{a: Patm._1, b: Patm._2.opt}
|
1のパターンは、{a: 1, b: 2}
, {a: 1}
にはマッチしますが {a: 1, c: 3}
にはマッチしません。
2のパターンは {a: 1, b: 2}
, {a: 1}
, {a: 1, c: 3}
すべてにマッチします。
パターン: Struct
これは需要は特になかったけど、勢い余って作った。 構造体をScalaのcase classみたいに使える。
Patm[struct_class].(...pattern...)
で、struct_class
用のパターンが作成できます。
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| Name = Struct.new(:first, :last)
case Name.new('todes', 'king')
when m = Patm.match(Patm[Name].('todes', Patm._1))
# ...
when m = Patm.match(Patm[Name].(last: 'king')) # ハッシュで個別の属性のみ指定できる
# ...
end
|
パターン: 合成
&
を使用して複数のパターンのANDを指定できます。_1&String
で、任意の文字列を_1
にキャプチャできます。
Patm.or(...)
を使用してOR条件を指定できます。
コンパイル処理について
Patm::DSL
のメソッド定義の実体はPatm::Rule
で、下記のようにすればコンパイル後のコードが確認できます。
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| rule = Patm::Rule.new(false) {|r|
r.on([Patm._any, 1]) { 1 }
r.on(a: [String, Patm._xs], b: Patm._1.opt) {|m| m._1}
r.else {|value| value }
}.compile
puts rule.src
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| def apply(_obj, _self = nil)
_ctx = @context
_match = ::Patm::Match.new
if ((_obj.is_a?(::Array)) &&
(_obj.size == 2) &&
((_obj_elm = _obj[1]; 1 === _obj_elm)))
_ctx[0].call()
elsif (_obj.is_a?(::Hash) &&
_obj.size >= 1 &&
(_obj.has_key?(:a) && (_obj_elm = _obj[:a]; (_obj_elm.is_a?(::Array)) &&
(_obj_elm.size >= 1) &&
((_obj_elm_elm = _obj_elm[0]; _ctx[2] === _obj_elm_elm)))) &&
(!_obj.has_key?(:b) || (_obj_elm = _obj[:b]; _match[1] = _obj_elm; true)))
_ctx[3].call(_match)
else
_ctx[4].call(_obj)
end
end
|
同様の処理を手書きするのに比べると4〜5倍程度遅いようです。マッチオブジェクトの生成と、マッチ時のproc呼び出しが原因だと思われます。まあ実用上は全く問題ない速度が出てる。
ベンチマーク結果
詳細はコード参照
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| RUBY_VERSION: 2.0.0 p247
Benchmark: Empty(x10000)
user system total real
manual 0.010000 0.000000 0.010000 ( 0.012840)
patm 0.040000 0.000000 0.040000 ( 0.044294)
pattern_match 2.230000 0.040000 2.270000 ( 2.304750)
Benchmark: SimpleConst(x10000)
user system total real
manual 0.010000 0.000000 0.010000 ( 0.014267)
patm 0.040000 0.000000 0.040000 ( 0.040269)
patm_case 0.190000 0.000000 0.190000 ( 0.193041)
pattern_match 2.260000 0.020000 2.280000 ( 2.321225)
Benchmark: ArrayDecomposition(x10000)
user system total real
manual 0.050000 0.000000 0.050000 ( 0.056363)
patm 0.240000 0.000000 0.240000 ( 0.269492)
patm_case 2.050000 0.010000 2.060000 ( 2.105357)
pattern_match 16.520000 0.100000 16.620000 ( 17.116351)
Benchmark: VarArray(x10000)
user system total real
manual 0.050000 0.000000 0.050000 ( 0.059690)
patm 0.220000 0.000000 0.220000 ( 0.219058)
patm_case 1.710000 0.010000 1.720000 ( 1.727676)
pattern_match 13.280000 0.090000 13.370000 ( 14.916347)
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実世界における使用例